人里離れた山奥に発射基地があった。
円筒状の地下サイロの中に聳え立つ威容。
核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルが、来るべき時を待って眠っている。
私は核ミサイルの発射指令官であった。

私は発射管制室の指令席に座って一日を過ごす。
いざ大統領が決断すると、私の元に直々の連絡がある。
大統領は私に発射認証コードを教える。
私は認証を解除し、二人の管制官に指令を下す。
二人の管制官は同時に鍵を回し、安全装置を解除する。
私の「発射」という命令と共に、同時に発射ボタンを押す。
そして、核ミサイルが発射される。この間、一分も掛からない。

訓練では何度も経験したことだ。間違えることはないだろう。
私は、そのときを待ち続ける。そのときはいつ訪れるか分からない。
何をするわけでもなく、ひたすら待機する仕事だが、緊張は絶えない。
とはいえ、別に催促されているわけではない。時間はたっぷりある。
その時間を使って、私は色々と考える。

もしも核ミサイルが発射されれば、多くの人命が失われるだろう。
核戦争に発展し、人類が滅亡するかもしれない。責任は重大だ。
最初に決断を下すのは大統領だとはいえ、現場で命令を下すのは私だ。
私の命令は、全人類の生命と等しいほどの重みを持っているのだ。
私は全人類の命運を握っているのだ。なんて素晴らしいことだろう。
いや、本当に素晴らしいのは、核ミサイルそのもだ。

圧倒的な破壊力を持つ兵器。
発射台を映し出すモニターの映像を見て、私はその美しさに魅了される。
核ミサイルの威容。無駄のないフォルム。
私は核ミサイルを愛する。ああ。なんと愛おしいのだ。
おまえが人間ならば愛の告白をしたいところだ。
キスをして抱きしめたいほどだ。ハァ、ハァ、ハァ。たまらん。

突然、非常事態警報が響き渡った。
僅かな間を置いて、大統領直々の電話が掛かってきた。
敵国と交戦状態に入った。核ミサイルを発射しろ。
ああ、ついに、このときが来たのだ。来てしまったのだ。

大統領が早口で認証コードを言う。
だが、私は復唱することもなく電話を切った。
何なのです。大統領の命令ではないのですか。
二人の管制官が私を問いただす。
しかし、私は拳銃を構え、二人を次々と射殺した。

私の愛する核ミサイルを、
使い捨ての道具になんてさせるものか。

人気ブログ 2008/05/02 ショートショート TB(0) CO(4)

ショートショート/ショートショート/ショートショート/ショートショート

そういうオチもありですか・・・・・
ゾックッとしましたね。

[2008/05/02 20:20] HARU [ 編集 ]

人より物を愛する気持ち、わかります。

[2008/05/03 09:36] ○○の□□マン [ 編集 ]

「博士の異常な愛情」に着想を得ました。

[2008/05/04 08:27] ペンギン666 [ 編集 ]

いいっすね

 意外な結末、なかなかいいですね。
 リチャード・マシスンだったかなの、『縮みゆく男』ねたもありましたね。
 カート・ヴォネガットではなにか書けないですか?

[2008/05/08 23:27] 犬儒@編集人 [ 編集 ]

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