「どうぞ、召し上がってみてください。
 大丈夫。安全は十分に確認されております。健康への悪影響はありません。
 美味しいですか。そうでしょう。本物の肉と遜色ないはず。
 いえ。それ以上の味と栄養価を持っているんです。
 しかも加熱加工したり食べたりしない限りは腐敗することもなく、
 植物のように土や水や光などで増殖するので、培養の手間もかかりません。
 この人工肉が普及すれば、人類は食料問題から解放されるでしょう」

博士の発明した人工肉は、瞬く間に世界に広まった。
それまでの人工肉とは異なり、味も栄養価も本物の肉以上。
腐敗することがなく培養の手間も少ないため、
家畜を飼育するよりも遥かに安いコストで済む。
もちろん家畜を屠殺することがなくなるため、
ベジタリアンや動物愛護団体からの評判もいい。
世界中の食料産業、いや、人類全体にとって、
まさに革命的な商品であった。

博士の所属する研究開発会社の株は急上昇。
世界中の食品メーカーがライセンスを購入し、
各地に次々と人工肉製造工場が建造された。
畜産農家も家畜の飼育をやめ、人工肉製造業へ鞍替えした。
だが、もはや食料産業自体が不要であった。
生の人工肉が外部へ流出したのだ。

人工肉は何しろ培養の手間が少ない。
観賞植物と大差ない程度である。
生の人工肉を手に入れることができれば、
それを培養して食べたいときに食べたいだけ食べればいい。
それまで飢餓で苦しんでいた発展途上国でも、
人工肉によって多くの命が救われた。
なんという、素晴らしい発明だろうか。

ところが、時間が経つにつれて問題が持ち上がった。
増殖する人工肉を処理しきれなくなったのだ。
人工肉は何もせずに放置していても、
光や大気中の水分を吸収して少しずつ増殖を続ける。
周りに養分があれば増殖は加速する。
増殖を食い止めるためには、冷暗所に隔離しておくか、
あるいは加熱加工したり食べてしまうしかない。
保管場所の容量にも加工する速度にも限界がある。
しかも人工肉は既に多くの人々の手に渡ってしまった。

増えすぎたために食べきれず、残しておいても邪魔、
となれば捨ててしまうしかない。多くの人工肉が不法投棄された。
中には生のまま棄てられた人工肉もあった。
それは野生化し、自然の養分を吸収して増殖を続けた。
都市部では下水道やゴミ処理場が人工肉によって埋め尽くされた。
農村部では田畑に侵入した人工肉によって、
農作物に害虫や害獣以上の被害が出た。
森林や草原は人工肉に養分を吸い取られて枯れ果て、
そこには巨大な肉塊だけが残った。

政府は野生化した人工肉を処理するため、
特務機関を設立して対応に当たった。
火炎放射器を手に日夜戦うスペシャリストたち。
それが俺たち人工肉殲滅隊である。

人気ブログ 2008/05/22 ショートショート TB(0) CO(8)

ショートショート/ショートショート/ショートショート/ショートショート

なんという、この世に長所の塊がないという皮肉

相変わらず肉い話を作りますね

[2008/05/22 18:14] さんじぇ [ 編集 ]

はじめまして

面白かったです。
肉の塊が野生化して勝手に増殖していくなんて……
こういうシュールさが大好きです。
こんがり焼けた人工肉は後でスタッフがおいしくいただくのでしょうか。うーん。

[2008/05/22 22:35] ヒサクニ [ 編集 ]

すごい世界…やはり人工物は問題がありますよね

[2008/05/22 23:43] 708cc [ 編集 ]

上手いですね

ペンギン666さんらしい作品ですーvv
オチが何とも、まさに人類と言った感じですね。

[2008/05/23 13:54] 亜梨須 [ 編集 ]

 ドラえもんでも「おかし牧場」という話がありましたが、ペンギンさんの人工肉たちの方がぐっと来ます!

[2008/05/23 19:53] amatorius [ 編集 ]

ウーン

久し振りに唸ってしまう作品です。
☆☆☆☆☆です。

[2008/05/24 19:58] 神戸の保険マン [ 編集 ]

人類みな肉恐怖症

人工肉殲滅隊

これで何かお話が出来そうですねー
肉に埋もれた世界で肉と戦うとか・・・ 

[2008/05/24 23:50] ななこ [ 編集 ]

肉食はほどほどに。

[2008/05/27 15:12] ペンギン666 [ 編集 ]

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