「ちょっと、この映像を見てもらえますか。
 事件直後に現場で撮影された映像です」

「ん、何かね? これは数ヶ月前の通り魔事件の現場だな。
 白昼堂々人通りの多い場所で刃物を振り回し、
 何人も殺した凄惨な事件だった。犯人は現行犯逮捕。
 裁判中だが、この映像がどうかしたのか?」

「何か、気づくことはありませんか?」

「そうだなぁ。これといって不審な点は見当たらないが。
 それにしても野次馬が酷すぎるな。
 わざわざテレビカメラに映って目立とうとしている奴が多い」

「ええ。そうなんです。その中でも、この男。
 ここに映っているでしょう。よく注目してみてください。
 画面が切り替わります。ほら、ここ。また映ってる」

「本当だな。何を考えているんだ、この馬鹿は。
 人が殺されているというのにテレビに映って喜んでるなんて。
 まったくモラルに欠けている。不謹慎も甚だしい。
 だが、まぁ世の中にはこういう馬鹿も少なからずいるもんだ。
 別に珍しいことじゃないとは思うが」

「それがですね、こいつの場合は異常なんですよ。
 映像を早送りしてみます。ここでもまた、この男が映っています。
 さらに早送り。ここでも。画面の端で分かりづらいですが、ここでも」

「これは凄いな。そこまでしてテレビに映ってどうしようというんだ」

「テレビだけじゃないんです。当時の新聞や雑誌も調べてみました。
 見てください。印をつけたところです。
 モノクロで分かりづらいかもしれませんが、同じ男です。
 膨大な量の写真や映像に、この男の姿が映っています」

「おいおい。いったいこの男は何者なんだ。
 もしかして、事件に何か関係があるのか?」

「犯人は単独犯。白昼堂々起きたので目撃者も多数います。
 生活苦から自暴自棄になっての犯行と思われ、
 誰かに指図されたなどという事実は出てきていません」

「じゃあ、やっぱり只の目立ちたがり屋なのか?」

「それにしては、あまりに出現回数が多すぎます。
 実は、この男が映っているのは通り魔事件だけじゃありません。
 こちらは最近起きた電車脱線事故の画像です。
 ほら、野次馬の中に同じ顔がありませんか」

「本当だ。髪型や服装は違うが、顔立ちはそっくりだ。
 しかし、こんなもの良く見つけたな」

「こちらは海外で起きた爆弾テロ事件の現場です。
 ほら、ここにも同じ男が映ってる」

「おいおい。海外にまで出場って何をしているんだ、この男。
 それに、どうやってこんなに映ることができるんだ。
 事件や事故を予測して先回りして映っているのか」

「様々な事件や事故の写真や映像を調べてみましたが、
 有名な事件や事故では必ずと言っていいほど、
 この男の姿が映っています。いえ、事件や事故だけではありません。
 スポーツ大会など大勢の人が集まる場所で撮影された画像にも、
 この男の姿が映っています」

「ふうむ。それで結局、こいつの正体は何者なんだ?
 生身の人間にこんなことができるなんて考え難いが。
 まさか、幽霊なんかじゃないだろうな」

「はい。ある意味で幽霊と言えるかも知れません。
 原因を探ってみたところ、驚くべき事実が分かりました。
 これはコンピュータウイルスの仕業なんです。
 デジタルの写真や映像を解析し、
 そこに映っている野次馬の中の一人の顔を勝手に加工する。
 実害はほとんどないので被害に気づきにくく、感染が広まりやすい」

「なるほど。それでこんなにあちこちで映っていたわけか。
 それにしても、そのウイルスを作った奴は何を考えているんだ」

「プログラムにメッセージが隠されていました。
 自分はもうすぐ病気で死ぬが自分の生きた証は歴史に残るだろう、と」

人気ブログ 2008/06/13 ショートショート TB(0) CO(2)

ショートショート/ショートショート/ショートショート/ショートショート

おもしろい!!

ナイス、アイディア!!


[2008/06/14 16:11] マリン [ 編集 ]

死因を○○ウィルスとして、そことの関連性でもう一捻りしたら、最大の傑作になったでしょう。

ナイスアイディアであることは賛同します。

[2008/06/14 22:49] 神戸の保険マン [ 編集 ]

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