携帯電話が壊れた。はじめ、誰もがそう思った。
電源を入れようとしても、何も反応がない。どうやら壊れたらしい。
衝撃を与えた覚えもなければ、水の中に落としたこともない。
メーカーに言えば無償で修理してくれるだろうか。
そんなことを考えた。

しかし、それだけでは済まないことが判明した。
全国、全世界の携帯電話が「一斉に」故障していたのである。
今の世の中、固定電話よりも携帯電話のほうが普及している。
仕事でも私生活でも欠かせない道具だ。

それが使えなくなったのだから、世界はパニックに陥った。
思うように他人と連絡が取れない。仕事に支障が出る。
代用の固定電話回線はパンク状態。株は軒並み大暴落。
政府が緊急対策会議を開き、各所で専門家が調査を行っても、
原因は何も分からない。携帯電話の機構自体には問題はない。
ただ、何故か電源が入らなくなっただけなのだ。
これはいったいどうしたことだ。

それでも多くの庶民は、あまり危機感を覚えてはいなかった。
たしかに携帯電話が使えないのは不便だ。
待ち合わせの約束や、緊急の要件などに使えないのは困る。
だが、携帯電話というものは便利な半面、
いつでも何処でも不躾な電話がかかってきたりと鬱陶しいこともある。
だいたい、一昔前まで携帯電話など世の中にはなかったのだ。
それ以前は固定電話で連絡を取り合っていたのだ。
このまま携帯電話が使えない状況が続いても、
一昔前の生活に戻るだけじゃないか。

ところが、そうも言っていられなくなった。
携帯電話の故障から数日後、ネットが使えなくなったのだ。
全世界に張り巡らされたコンピュータ回線が、一斉に繋がらなくなった。
やはり原因は分からない。
携帯電話の上にネットまで使えないという状況に、
パニックは拡大するばかりだった。
ATMでは預金が引き出せなくなり、銀行の窓口に客が殺到した。
警察や消防の機能も著しく低下した。
先行きの見えない不安から暴動が巻き起こった。

それでは終わらなかった。
次々と電化製品が使えなくなったのだ。
パソコンが使えなくなり、エアコンが使えなくなり、電子レンジが使えなくなり、
AVプレイヤーが使えなくなり、掃除機が使えなくなり、洗濯機が使えなくなり、
ついにはテレビやラジオまで原因不明の故障に見舞われた。
いや、電化製品どころか、電気そのものが使えなくなってしまった。
電流が流れているはずなのに、照明が点かない。電話も使えない。
電車もただの鉄クズと化した。
食糧の生産にも支障を来たし、各所で飢餓が発生した。
暴動や犯罪の発生件数は留まるところを知らなかったが、
その全容を把握することはもはや不可能だった。

ここまで、一年。
一年の間に人類の文明は大きく衰退した。
電気の使えなくなった世界。百年前の生活に戻ったようなものだ。
いや、それよりも酷い状況だろう。だが、もっと酷い状況が待ち受けていた。
今度は、化石燃料に火をつけても燃えなくなったのである。



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人気ブログ 2008/08/01 ショートショート TB(0) CO(2)

ショートショート/ショートショート/ショートショート/ショートショート

ああ、好かった、愉しみのショートショートの再開ですね。昨夜、友人と地球の近未来について、酒を飲みながら<空想談>して来ました。切り口が違って、拍手です。これからの展開、大いに気に為る処です。

[2008/08/01 10:24] アガタ・リョウ [ 編集 ]

感想

再開おめどうございます。
またちょくちょく読ませてもらいます。

衰退関連ですが、株でかなり損して
しまいました。
金融市場が衰退しないことを祈ります。

以上。

[2008/08/01 16:06] starcompassat2005(小説サイト) 星定規 [ 編集 ]

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