私は今日も時間通りに目を覚ました。
壁のハンドルをまわしてカーテンを開ける。抵抗力があって重いハンドル。
腕に力を入れて何回かまわしたところで、部屋に朝日が差し込んだ。
やれやれ。今日も一日の始まりだ。

朝食はトーストと目玉焼きと決めている。
トースターについているハンドルを回す。十回、二十回、三十回。
何十回かまわしたところでトースターが発熱する。
今度はコンロだ。同様にハンドルをまわして火を起こす。
ふうふう。息を切らしながら朝食を摂ることができた。

さて、じゃあ顔を洗って歯を磨こう。
水道の蛇口もこれまたハンドルになっている。
一回や二回まわしただけではチョロチョロとしか水が出ない。
それを洗面器やコップに貯めて使う。ああ、なんて面倒くさい。
汗ばんだシャツを洗濯機に放り込む。洗濯機もハンドル式だ。
しかし、面倒だから明日まとめて洗うことにしよう。

スーツに着替えて部屋を出る。
出勤するには電車に乗らなければならない。私は憂鬱になった。
改札を通ってホームへ。電車に乗り込むと、そこにまたハンドルだ。
床から突き出た幾本ものポールと、そこに取り付けられたハンドル。
それを乗客たちがまわすと、重い車体がゆっくりと走り始めた。
乗客たちは一様に無言のまま一心不乱にハンドルをまわし続ける。
とても疲れるけれど、これが乗客に課せられた義務なのだから仕方がない。

もう腕に力が入らない、というくらいになって、
ようやく会社のある駅に到着した。でも、まだ難関が残っている。
私の会社はビルの高層階にある。エレベータが取り付けられているが、
これがまた曲者なのだ。このエレベータは自動では動かない。
やはりハンドルをまわす事で動く、手動式エレベータなのだ。

一見、これならば階段を使ったほうが速いのではないかと思われるが、
あちらはあちらで面倒くさいことになっている。
階段を登る者の自重によって下りエスカレータのように逆流する
ベルトコンベア式になっているのだから始末に終えない。
死に物狂いでハンドルをまわすうちにエレベータは上昇し、
やっとのことで私は会社に辿り着いた。

それにしても、とんでもない社会になったものだ。
いくら省エネだのクリーンエネルギーだのといっても、
国民の運動力で発電しようだなんて。

人気ブログ 2008/08/11 ショートショート TB(0) CO(4)

ショートショート/ショートショート/ショートショート/ショートショート

感想

なんでもかんでもハンドル。
大変な社会ですね。
想像してみて単純におもしろかったです。

以上。

[2008/08/11 14:36] starcompassat2005(小説サイト) 星定規 [ 編集 ]

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[2008/08/11 19:33] - [ 編集 ]

究極のエコかもしれない!

[2008/08/12 00:50] 708cc [ 編集 ]

すごい!
でもカーテンは普通で良い気がs<ry>

[2008/08/14 11:43] 是非(元愚玖) [ 編集 ]

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